
同伴という名の孤独 同伴――ホストにとって“売上”に直結する、最も現実的な時間のひとつだ。
しかし、それは同時に、最も“心の距離”があらわになる時間でもある。
今夜、レンは一人の女性と歩いていた。
ネオン街を抜け、店へと向かう15分。けれども、すぐ隣を歩いているのに、どこか遠く感じる沈黙が続いていた。
「……さっきまで楽しかったのにね」
彼女がぽつりとこぼした。すると、レンは軽く笑って、少しだけスピードを緩める。
「人混み、苦手なんだ」
そう言いながらも、彼は彼女の方を見なかった。まるで、何かから目をそらしているかのように──。
ホストと客の間にある“線”
その言葉が、今のレンを象徴しているようだった。
女性はブランドバッグを抱え、ヒールの音を響かせて歩く。しかし、その目には、楽しさよりも“確認”のような光が宿っていた。
「私のこと、ちゃんと見てくれてる?」
まるで、そう問いかけるように。レンは、そのサインを敏感に感じ取っていた。
けれども、何かが足りない。
それは言葉ではなく、もっと感情的な“ずれ”だった。
もちろん、ホストとして、接客の“型”は完璧にこなしている。
それなのに、彼女の期待にある“個人”の気配は、レンの中でどこか薄れていた。
かつて“同伴”は特別だった
ふと、あの瞬間を思い出す。
まだNo.2でもなかった頃――初めての同伴で感じた緊張感。
待ち合わせ場所にいた女性が、自分を見て微笑んだ、その一瞬。
まさに、何かが“満たされた”気がした。
けれど、今はどうだろう。
笑顔も、言葉も、視線さえも、すべてが“仕事”の延長になっている。
もちろん、それが悪いというわけではない。
とはいえ、“何か”を失ってきている――そんな実感があった。
彼女の横顔をちらりと見る。
――おそらく、彼女も気づいている。
この時間が、ふたりにとって「特別」ではないことに。
店の光の向こうに
まもなく、店のネオンが視界に入ってきた。
とはいえ、それはただの入口ではない。
むしろ、ふたりにとっては“逃げ場”だったのかもしれない。
「今日も、よろしくね」
彼女は、あえて明るく言った。
レンは、いつも通りの笑顔で応える。
「もちろん。俺に任せて」
扉の奥に入れば、いよいよ演じる時間”が始まる。
しかし、それまで続いていた“沈黙”こそが、ふたりの“本音”だった。
ホスト 同伴 孤独――。
名前のない関係が交差する、この夜のワンシーン。
まさに、言葉よりも沈黙にこそ、真実が宿っていた。
