
ホスト 名前 覚えられない ――新人の葛藤
「ごめんね、前も来たよね?……名前、なんだっけ?」
その一言が、心に刺さった。
新人ホストのユウトは、まだ指名が取れずにヘルプで動く毎日。
愛想笑いは上手くなった。でも、“名前”を覚えてもらえないことが何よりも辛かった。
「覚えてもらえないうちは、ホストじゃない」
そう言った先輩の言葉が、胸を締めつける。
もちろん、最初は仕方がないと思っていた。
けれど、何度も同じお客様に付いているのに、毎回“初めまして”の空気で迎えられる。
ホスト 名前 覚えられない悩みが積もる
「名前を呼ばれるって、こんなに嬉しいものなんだ」
一度だけ、ふいに名前を呼ばれた日があった。
その夜の売上はゼロだったのに、なぜか心が満たされていた。
けれど、それ以降、名前はまたすぐ忘れられた。
先輩たちは皆、名前だけで場を沸かせる。
その違いに、圧倒されるしかなかった。
「何が足りないんだろう?」
ユウトは、鏡の中の自分に問いかける。
トーク?
ビジュアル?
それとも、“印象”そのもの?
ホスト 名前 覚えられない自分を、変えるために
「ユウトくんってさ、なんか“印象に残らない”よね」
たまたま聞こえてしまったスタッフの会話。
胸が痛んだが、同時に気づきもあった。
“覚えてもらえない”という事実に、ずっとフタをしてきた。
でも、現実から逃げていては、何も変わらない。
そこで彼は、ある日から“自分なりの名刺”を持つことにした。
それは紙の名刺ではなく、たとえば語尾のクセ。
たとえば、自分だけの挨拶。
そして、話の最後に「名前、覚えてくださいね」と一言添えること。
少しずつではあるが、「あ、ユウトくんだ」と言われることが増えていった。
名前は“与えられるもの”ではない。
記憶に“刻んでもらう”ものだ。
そう気づいた夜、ユウトの背中は少しだけ伸びていた。
