
夢を持たないホスト、店内の喧騒が遠ざかる中、そう呼ばれている男がいる。ハルキは休憩室でひとりの男と話していた。
彼の名はカズ。ナンバー表には載っていない、しかし常連客からの指名は安定しているベテランホストだ。
「カズさんって、将来どうしたいんですか?」
ふとした会話の流れで、ハルキは思わずそう尋ねた。
だがカズは、笑うことなく返す。
「……俺、夢とか持ってないよ」
夢を持たない、語らないホストの理由とは?
多くのホストは「独立したい」「店を持ちたい」など、何かしらの夢を口にする。
しかし、それは自分を“輝かせる”ための道具であり、客を惹きつけるための材料でもある。
だが、カズは違った。
「夢を語っても、叶わなきゃ恥になるだけだしさ」
「それに、夢があるように見せてたほうがウケるって、もう気づいてるでしょ?」
確かに――と、ハルキは思う。
夢を語るホストは、応援されやすい。
だが、もしそれが嘘だったら?
本音と演技の境界線
「夢を語れない俺は、ホストとしてダメかな?」とカズが苦笑する。
だがハルキは、すぐに首を振った。
「そんな事ないです!むしろ……本音で話してくれる分、僕は安心します」
夢を見ないホスト――つまりそれは、嘘をつかないホストかもしれない。
だからこそ、彼の言葉は妙に沁みた。
名前のない夜、夢を持たないホスト
その後、ハルキは店内に戻る。
煌びやかな笑顔と、盛られた言葉が飛び交う世界に。
だがその中で、カズのように「何も語らないホスト」がいることを、彼は忘れなかった。
夢を見ないからこそ、今夜も変わらぬ笑顔で接客をする。
その姿勢こそが、実は最も“リアルなホスト”なのかもしれない――と、ハルキはふと思った。夢を見ない
