
ホスト指名デビュー 「――ご指名入りました。国見くん、〇卓お願いします」
その言葉を聞いた瞬間、何かが変わった気がした。店内のざわめきの中でも、その“名前”だけは確かに自分のものだった。
国見は、呼吸を整えながら席へと向かう。
緊張していないと言えば嘘になる。だが、昨日までの自分とは、少しだけ違う。
ホスト指名デビュー 喜びを感じた“名前を呼ばれる”瞬間
指名された相手は、初日に少しだけ話した女性だった。
「昨日はおもしろかったから、また話したくなっちゃった」
彼女の笑顔は、緊張を和らげてくれる。
グラスを差し出しながら、国見は静かに言った。
「覚えててくれて、ありがとうございます」
それは、誰にも気づかれずに過ごした“新人時代”の自分にとって、初めて“存在”が証明された瞬間だった。
この世界で「名前を呼ばれる」ということ。それは、ただの呼称ではない。
誰かの記憶に“刻まれた”という意味であり、ホストとしてのスタートラインに立てたということだ。
この夜、国見は小さく頷いた。
一方その頃──“名前を持たない強さ”を求められる東條
同じ時間、街の片隅。東條は組織の実力者に呼び出されていた。
「お前の名前は出すな。いいな?」
書類の端に自分の名が記されることすら許されない。
裏社会では“名を消す”ことが、役割を果たす上で必要だった。
誰の目にも映らず、誰の記憶にも残らない。
だが、誰よりも“影”として動き続ける。
その矛盾に、東條は時折苦しんだ。
だが、目を閉じた時、ふと思い出す。
「いつか、国見が“名前”で呼ばれる日が来る――」
その日が来たことを、どこかで“感じていた”。
ホスト 指名デビューが、夜の希望に変わる
店の片隅、初めて指名で呼ばれた席。
その一杯は、涙がこぼれそうになるほど、嬉しかった。
「今日はありがとう。また来るね」
女性が立ち去ったあとも、グラスを持つ手は震えていた。
「次も、名前で呼ばれるように頑張ろう」
そう思えた夜だった。
