
ホスト 売掛の現実に直面した国見の葛藤
「指名は伸びてる。それでも――金は、入ってこない。」
白いワイシャツの袖をまくりながら、国見は帳簿を見つめていた。自分を指名してくれる客の数は増えている。ところが、なぜか売上が伸び悩んでいた。
「……売掛か。」
先輩ホストが吐き捨てるように言ったその一言が、それ以来耳に焼きついていた。ホストの売掛の現実――客がその場では支払わず、後日精算するシステム。しかし、支払いが滞ればホストが“自腹”で負担することになる。華やかな夜の裏では、若いホストたちが“帳尻”という名の恐怖と常に向き合っていた。
「命を一千万で買ってください!」
あのとき田村が叫んだセリフが、ふと脳裏に蘇ってきた。
あれは表の世界でのやりとりだったが、ホストという仕事もまた、金と命の綱渡りだ。国見はそのことを、ようやく肌で理解し始めていた。
東條が目にした“回収”という現実
一方その夜。
東條はスーツの襟を整えながら、裏通りに現れた黒塗りの車に静かに乗り込んだ。
「回収先、どうやら動いたらしいっす」
助手席の若手が、スマホを見ながら告げた。借金を踏み倒し、夜逃げを図った女――ホストクラブの“上客”だった。
金が動かなければ、店が潰れる。潰れれば、人が死ぬ。そんな単純だが、苛烈な計算式が、この世界には存在する。
ホスト 売掛 問題が繋ぐ“裏と表”
一方同じ夜、別の場所で。
国見は、自分の“客”がまた一人、未払いになったことを知った。
「……なんで、俺はまだ信じてるんだろうな」
誰にも聞こえない声で、笑った。
だがその目には、悔しさと覚悟が宿っていた。
そして裏社会では、東條が車窓から夜の街を見下ろしていた。
「……夢を売る仕事ってのは、代償が重ぇな」
互いの存在を知らぬまま、ふたりは同じ痛みに触れていた。
“売掛”という言葉が、夜の帳の中でゆっくりと重く沈んでいく。
