実際ホストクラブにそんなにいない 第11話

実際ホストクラブにそんなにいない

ジンは、鏡に映る自分の姿をじっと見つめながら、先輩に向かってぽつりと口を開いた。

「でも俺、背が凄く低いんですけど……本当に大丈夫ですか? 顔だけじゃなく、“チビ”もコンプレックスで……」

緊張からくる自虐めいた口調に、先輩ホストは笑って首を振った。

「全然大丈夫だよ、仁君。そんな小さくないって!」

その言葉にすらジンは素直になれなかった。

「そんなお世辞、いいですよ……。雇ってもらったとしても、俺、チビでイケメンでもないから、全然役に立たないかもしれません」

すると、先輩は少し慌てた様子で手を振った。

「いや、気にすることないって!」


コンプレックスの正体

実は、「背が低い」と男の人って、それだけで物凄いコンプレックスを抱えやすい。
確かに、女性は“背が高い男性”を好む傾向があるのも事実だ。けれど――。

「仁君は、背が低いのを気にしているようだけど……」

先輩ホストは、真っ直ぐな目でジンを見た。

「そもそもホストって、接客中は座ってるから、全然“チビ”とかお客には分からないんだよ?」

たしかに、ホストクラブは基本的に接客時は全員が座っている。
つまり、座高が高ければ、それだけで高身長に見えることすらある。

私も、初回で送りにしたホストが、立ってみたら意外と小さかったって経験があるけれど、だからってその人が嫌いになるわけじゃなかった。
むしろ、「座っている姿が堂々としてた」ことの方が、印象に残っていたくらいだ。


“イケメンの定義”はひとつじゃない

先輩は、軽く顎に手を添えながら続けた。

「それに、ホストクラブって“高身長イケメン”って、実際そんなにいないんだよ」

ジンは、驚きつつも先輩の言葉を聞き逃さなかった。

(この人、さりげなく“自分のこと”高身長イケメンって言ってない!?)

「うちの店も、俺入れて3人ぐらいしかいないかな~」

飄々と言うその姿は、どこか自信にあふれていた。でも、それが不快じゃないのは――きっと、その裏にある“実際”を知っているからだろう。


身長よりも大切なこと

実際、ホストとして売れるのは「高身長イケメンホスト」ばかりじゃない。
もちろん、外見の第一印象は重要だが、それだけで全てが決まる世界ではない。

たとえば、「ハ○ド様」だって身長は161cmらしいけれど、あれだけ女性にモテている。
身長って、好きになったら全然関係ないのだ。

大切なのは、“どう見せるか”“どう向き合うか”。

ジンは少しだけ笑った。

まだ、自分に何ができるかは分からないけど――
「実際ホストクラブにそんなにいない」条件の男だからこそ、見せられる接客が、きっとあるはずだ。


ホスト用語解説

  • 高身長イケメンホスト:確かに人気が出やすいが、それだけで売れるわけではない。
  • 初回:初めて来店すること。格安で体験できるため、ホストクラブに行くならまずはここから。
  • 送り:営業後、気に入ったホストに見送りしてもらうこと。初回時の「送り指名」は無料。

この話をぜひ原作漫画で読んでくださいホスト漫画ドットコム ジン君 第11話

第12話へ続く ホストクラブの体験入店 へ続く


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