
ジンは、鏡に映る自分の姿をじっと見つめながら、先輩に向かってぽつりと口を開いた。
「でも俺、背が凄く低いんですけど……本当に大丈夫ですか? 顔だけじゃなく、“チビ”もコンプレックスで……」
緊張からくる自虐めいた口調に、先輩ホストは笑って首を振った。
「全然大丈夫だよ、仁君。そんな小さくないって!」
その言葉にすらジンは素直になれなかった。
「そんなお世辞、いいですよ……。雇ってもらったとしても、俺、チビでイケメンでもないから、全然役に立たないかもしれません」
すると、先輩は少し慌てた様子で手を振った。
「いや、気にすることないって!」
コンプレックスの正体
実は、「背が低い」と男の人って、それだけで物凄いコンプレックスを抱えやすい。
確かに、女性は“背が高い男性”を好む傾向があるのも事実だ。けれど――。
「仁君は、背が低いのを気にしているようだけど……」
先輩ホストは、真っ直ぐな目でジンを見た。
「そもそもホストって、接客中は座ってるから、全然“チビ”とかお客には分からないんだよ?」
たしかに、ホストクラブは基本的に接客時は全員が座っている。
つまり、座高が高ければ、それだけで高身長に見えることすらある。
私も、初回で送りにしたホストが、立ってみたら意外と小さかったって経験があるけれど、だからってその人が嫌いになるわけじゃなかった。
むしろ、「座っている姿が堂々としてた」ことの方が、印象に残っていたくらいだ。
“イケメンの定義”はひとつじゃない
先輩は、軽く顎に手を添えながら続けた。
「それに、ホストクラブって“高身長イケメン”って、実際そんなにいないんだよ」
ジンは、驚きつつも先輩の言葉を聞き逃さなかった。
(この人、さりげなく“自分のこと”高身長イケメンって言ってない!?)
「うちの店も、俺入れて3人ぐらいしかいないかな~」
飄々と言うその姿は、どこか自信にあふれていた。でも、それが不快じゃないのは――きっと、その裏にある“実際”を知っているからだろう。
身長よりも大切なこと
実際、ホストとして売れるのは「高身長イケメンホスト」ばかりじゃない。
もちろん、外見の第一印象は重要だが、それだけで全てが決まる世界ではない。
たとえば、「ハ○ド様」だって身長は161cmらしいけれど、あれだけ女性にモテている。
身長って、好きになったら全然関係ないのだ。
大切なのは、“どう見せるか”“どう向き合うか”。
ジンは少しだけ笑った。
まだ、自分に何ができるかは分からないけど――
「実際ホストクラブにそんなにいない」条件の男だからこそ、見せられる接客が、きっとあるはずだ。
ホスト用語解説
- 高身長イケメンホスト:確かに人気が出やすいが、それだけで売れるわけではない。
- 初回:初めて来店すること。格安で体験できるため、ホストクラブに行くならまずはここから。
- 送り:営業後、気に入ったホストに見送りしてもらうこと。初回時の「送り指名」は無料。
この話をぜひ原作漫画で読んでください→ホスト漫画ドットコム ジン君 第11話
第12話へ続く ホストクラブの体験入店 へ続く