
ホストのロッカールーム
体験入店の当日。
ジンは店内奥にあるホストのロッカールームに案内され、真新しいスーツのラックの前でしばらく立ち尽くしていた。
やがて、目に留まった一着を手に取り、彼はぽつりと口にする。
「俺、この細身のスーツにします」
そう言って選んだのは、光沢のあるネイビーのレンタルスーツだった。
初めてとはいえ、ジンは少し緊張した様子を見せながらも、どこか嬉しそうだった。
その直後、先輩ホストが白いワイシャツを手に取って渡してくる。
「はい、これも渡しとくね。仁くんは今日一日体入だから、この白いYシャツ着てくれる?」
「わかりました!」
ジンは元気よく返事をした。
しかし、その直後、彼の視線はふと宙をさまよい始め、首をかしげながら周囲を見回し始める。
明らかに、何かを探しているようだった。
着替える場所どこ?-ホストのロッカールーム
ロッカールームの壁沿いには、ずらりとロッカーが並んでいる。
その中には、スーツ用のハンガーや整髪料、香水、そして各ホストの私物が所狭しと詰め込まれていた。
また、壁には鏡やドライヤー、ヘアアイロンが設置されており、奥には小さなパウダールームも備えられている。
とはいえ、肝心の“更衣室”と呼べるような仕切られたスペースは、どこを見渡しても見当たらない。
(あれ……どこで着替えれば……)
そんな疑問が浮かび上がった頃、ジンの表情が曇り始める。
「……ん?どうした?」
不安そうなジンの様子に気づいた先輩が、すかさず声をかけてくる。
そこで、ジンは少し戸惑いながらも意を決して問いかけた。
「あの……カーテンの仕切りとか、更衣室はないんですか?」
すると、先輩は一瞬だけ沈黙したのち、勢いよく突っ込んだ。
「男だろッ!?お前ッ!ここで着替えろよ!……つーか、ここが更衣室だよ!」
ホストの裏側:ロッカールームの実態
実は、ホストクラブのロッカールーム事情は、店舗によってかなり異なっている。
たとえば、広くて清潔な更衣スペースがしっかり整備されている店舗もあれば、反対に、雑多でロッカーしか置いていないような“男の楽屋”的な店もある。
もちろん、鍵付きロッカーは用意されているが、スペースの都合上、着替えはオープンスタイルで行われるのが一般的だ。
そのため、仕切りやカーテンが完備された店舗は、実のところ少数派にあたる。
特に、歌舞伎町のようにビルが密集している地域では、物理的なスペースに限界がある。
だからこそ、必然的に「ここが更衣室だよ!」というスタイルに落ち着いてしまうのだ。
スーツを通勤で着るホストも
ジンのように「人目が気になる」タイプのホストは、家や寮からスーツを着て出勤するケースもある。
とはいえ、夏場のスーツ通勤はなかなかハード。ジャケットを脱いでも汗が止まらない。歌舞伎町の裏路地をスーツ姿で歩くだけで、気温以上の暑さを感じる。そんな環境もあり、ロッカールームでの着替えは「慣れた方が楽」とされている。
ちなみに、ロッカーには自分の名刺を貼って“個人スペース”を主張するのが一般的。ヘアメイク道具や香水を並べて「俺の場所」を作るのも、ホストの流儀のひとつだ。
~ホスト用語~
ロッカールーム:ホストクラブの更衣室・バックヤード。呼び名は様々だが、ここで着替えやヘアメイク、私物管理を行う。
ヘアメイク:髪型を整えたり、化粧をすること。セット専門のスタッフがいる店もある。
レンタルスーツ:店が用意している貸出用スーツ。新人や体験入店者向けで、無料または格安で利用可能。
この話の原作4コマは
ホスト漫画ドットコム ホストな日々
「第16話 ホストクラブのロッカールーム」 に掲載中です!
