
ホストヘアセットは終わった…はずだった
「ヘアメイク、終わりました」
そう報告するジンの頭を見て、先輩ホストは首をかしげた。
「……あれ?仁君、髪型変わってないよ?本当にヘアセットしたの?」
その言葉に、ジンはばつが悪そうに笑いながら説明し始めた。
「髪もやってもらったんですけど……なんか戻っちゃって」
実は10分前、ジンはメイクさんに“筋盛り”をほどこしてもらい、バッチリとホストらしい髪型に仕上がっていた。だが、セット後の自分を鏡で見た瞬間──違和感が拭えなかった。
筋盛りって、こんなに硬いの?
「普段、前髪出さないから……おでこ見えてるのがすごく不自然な感じがして」
そう思ったジンは、控室に戻るなり、そっと前髪に手を伸ばした。そしてクシを借りて、前髪を少しだけ直そうとしたのだ。
だが──
「……あれ?パリパリする……全然クシ入らない!かたっ……くそっ!」
彼の手に握られたクシは、頑丈に固められたスプレーの壁に阻まれ、びくともしなかった。筋盛りの真髄は“ガッチリ固めて動かさない”こと。その意味を、ジンはこの時初めて“体感”したのである。
自分で直すのはNG?ホストヘアセットの落とし穴
「それで……一生懸命とかしたら、戻っちゃいました」
ジンが申し訳なさそうにそう語ると、先輩は額に手を当てて嘆いた。
「そりゃ戻るだろ……もったいない……」
プロが仕上げた“ホストヘアセット”を、自ら台無しにしてしまう──これも新人ならではの洗礼と言えるだろう。
ホストの髪型はただのオシャレではなく、“営業前の戦闘準備”でもある。特に筋盛りは、スプレーで髪を固め、クシで筋状の束感を作る繊細な技術だ。だからこそ、仕上がったら触ってはいけない。いじればいじるほど、せっかくの“ホスト感”が消えていってしまう。
ホストヘアセットの今と昔
ひと昔前は、金髪やロングヘアを大胆に盛り上げた“ライオンスタイル”が主流だった。だが最近では、黒髪や短髪のホストも多く、髪型のバリエーションは大きく広がっている。
中でも“ビジュアル系ホスト”と呼ばれるジャンルでは、ピンクや白金、メッシュなど派手なカラーリングが主流。見た目は華やかだが、維持するには時間もコストもかかる。毎日のヘアセットも簡単ではなく、それだけに彼らの美意識と努力は計り知れない。
いつか自分のスタイルを持つために
ジンのような新人にとって、ホストヘアセットはまだ未知の領域だ。しかし、経験を重ねるごとに、誰もが自分に似合うスタイルを見つけていく。最初の失敗や戸惑いも、そのために必要な通過点だ。
今日の“やらかし”も、きっと明日につながる。そう信じて、ジンはまた鏡の前に立つのだった。
この話の原作4コマは
ホスト漫画ドットコム ホストな日々
「第20話 ホストのヘアセット」 に掲載中です!
