
ホスト 二人三脚 二人でしかできない旅路がはじまる。
その歩みを確かめる夜 ホスト 二人三脚
営業終了後のホールには、もはや喧騒の気配すら残っていなかった。
聞こえるのは、床を拭くモップの擦れる音と、香水の残り香がかすかに漂うだけ。
つまり、そこはまるで一日の終わりを静かに見送るステージのようだった。
「兄貴、さっきの席……見てた?」
龍斗が、グラスを片付けながら何気なく声をかける。
「ああ。見てたよ。……お前、変わったな」
昇大は、どこか懐かしさを含んだ笑みを浮かべた。
というのも、以前の龍斗なら、ああいったタイプの客には圧倒されて黙り込んでいた。
けれど今では、言葉を操り、空気を読み、人の感情に寄り添える“ホスト”になっていた。
「でもさ、オレなんてまだまだだよ。
兄貴の背中がようやく半分くらい見えてきた程度」
「違ぇよ。そんなもん追いかけてんな。
越えてけ。お前はもう――オレの隣に並んでる」
そう言って、昇大はゆっくりと拳を差し出す。
そして、拳と拳が音もなく重なる。
強くもなく、弱くもなく――
それでもなお、それだけで十分だった。
けれど、それだけで十分だった。それどころか、言葉など必要なかったのだ。
言葉はいらない。そう思える“信頼”が、そこにあったからだ。
ホストとしての旅を“やり切った”実感
ロッカールームに戻った二人は、スーツを脱ぎながら同時に息をついた。
「今日も疲れたな……でも、なんか達成感ある」
だからこそ、龍斗の言葉に、昇大も頷いた。
「この店で、俺たちなりに“やり切った”って思えるよな」
すべてを教えてくれたこのフロアで、だからこそ、兄弟はそれぞれの“成長”を果たした。
けれどその一方で、自然と浮かぶ“次のステージ”の存在。
ホスト 二人三脚の延長線にある“次の船”
「兄貴。……もし、なんだけどさ」
龍斗が、鏡越しにぽつりと声をかけた。
「もしさ、オレたちで“店”を持てたら――
そのとき、どんな景色が見えると思う?」
「バカ言え。まだ何も始まっちゃいねぇだろ」
そう言いながらも、昇大の口元には思わず笑みがこぼれていた。
というのも、心の奥では――
もちろん同じ夢を、同じ角度から見つめていたからにほかならない。
「オレたちはさ、“二人で一人”だろ?」
それはかつて交わした約束であり、今もなお、変わらず彼らを支える信念だった。
ホストとして、兄弟として、そして――一人の“人間”として。
結局のところ、彼らの歩みは、いつだって“二人三脚”だったのだ。
ホストの旅は、まだ終わらない ―― 次章へ
「じゃあさ、兄貴――そろそろだろ?」
龍斗が、ほんの少しだけ声を低くして言った。
「……俺たちの船、いよいよ出す準備、しようぜ」
昇大は驚くこともなく、ただ静かに、力強く頷いた。
「……あぁ。たしかに、いい潮が来てるかもしれねぇな」
それは、あくまでさりげない会話だった。
けれど、その一言一言が――
二人にとっての“はじまりの鐘”だった。
この夜、彼らは確かに一つの章を終え、次なるステージに足を踏み出した。
つまり、ホストとして、そして兄弟としての旅は――
まだまだ終わらない。
“二人三脚”の物語は、ここからが本当の始まりだった。
