
見た目と違うホスト 人は見かけによらない!?
新人ホストに必要なのは“教育係”体験入店の当日。
ジンはスーツの襟を整えながら、ホストクラブのバックヤードで少し緊張していた。
ちょうどその時先輩ホストがにこやかに声をかけてきた。
「俺、今日は他の仕事もあってジン君のことずっと見てあげられないからさ。代わりに教育係を紹介するよ。……直也、こっち来てー!」
その声に応じて、店内奥からスッと現れたのは、背筋の伸びた端正なホストだった。
(……優しそうな人だといいなぁ)
そう思いながら、ジンは心の中で祈るように願った。
しかし、直也の目元は鋭く、しかも口元はほとんど笑っていない。
第一印象は「ちょっと怖いかも…?」
「ジン君、今日の体入中は直也がずっと面倒見てくれるから、何でも聞いてね」
先輩の言葉を聞きながらも、ジンの脳内は別の思考でいっぱいだった。
(なんか見た感じきつそうな人だなぁ……。無言で怒られたりしたらどうしよう)
とはいえ、その一言で、そんな心配はあっさりと裏切られる。
直也がジンの前に立ち、落ち着いた声で言った。
「ホスト初めてなんだって? 分からないことばっかだと思うから、遠慮せずに何でも聞いてくれていいよ」
その瞬間、ジンは思わず目を見開いた。
それどころか、表情には驚きと安堵が入り混じっていた。
「……はい! ありがとうございます! 直也さんって、すごく優しいんですね!」
見た目と違うホストの“本当の姿”
そう思うと、ジンはそのまま思ったことをぽつりとこぼしてしまった。
「たいしてイケメンじゃないのに、見た目感じ悪くて性格がすごくきつそうだなって思ってたんですけど、見た目と違って優しいんですね!」
直也は固まった。……一瞬の静寂。そして、やがて思いがけない反応が返ってくる。
「お前の方が見た目と違って性格きつそうだよ!? なんでそんな酷いことをサラッと言えるの!?」
その瞬間、ジンが慌てふためくと、今度は周囲のホストたちがクスクスと笑いをこらえ始めた。
しかしながら、それこそが“ホストの現場”なのかもしれない。
見た目じゃ分からない人間性――むしろ、予想を裏切られることが、信頼を生むこともある。
あるいは、言葉よりも空気で通じる安心感が、ここにはしっかりと根づいているのかもしれない。
見た目と違う?教育係とは、ホストの兄貴的存在
実際、ホストクラブでは代表や教育係といった役職が存在する。
まず、代表というのは店の責任者のことだ。プレイヤーとして接客を行いながら、さらに自分の客を抱えたり、新人のサポートをしたりと多忙を極める。
そのため、体験入店の対応は多くの場合、教育係が引き受けることになる。
では、教育係とは一体どんな役割なのか。
一言で言えば、新人ホストや体入希望者の面倒を見てくれる“兄貴”のような存在だ。
具体的には、以下のようなホストの基礎を、優しく丁寧に教えてくれる。
- 店のルール
- 席での振る舞い方
- お酒の作り方
- 礼儀と挨拶の徹底
加えて、新人ホストがミスをすれば、教育係の責任とみなされる場合もある。
したがって、フォローも厚く、誰でも任されるわけではない。
だからこそ、教育係は信頼できる存在として、新人ホストたちからの支持も自然と厚くなるのだ。
フロアに出されて放置?そんな心配は不要!
「いきなり現場に出されて、何も分からないまま放置されるんじゃ……」
そう思う人もいるかもしれないが、実のところそれは完全な誤解だ。
というのも、今どきのホストクラブは、体験入店者にも丁寧な指導とフォロー体制をしっかり用意している。
とりわけ教育係がついているお店なら、まず安心していい。
さらに言えば――
教育係と面倒を見てもらったホスト君には、厚い信頼関係が生まれる
という噂もあるほど(笑)。
実際、一番最初に親身になってくれた人の存在は、新人にとっては非常に心強いものなのだ。
ホスト用語解説
- 代表:ホストクラブの責任者やプレイヤー。つまり、店全体の方向性を担う重要な役職である。
- 教育係:新人や体験入店者の面倒を見る先輩ホスト。とりわけ基本業務に長け、かつ面倒見が良い人が任される。
- フロア:店内の接客スペースのこと。ここが新人ホストも実際に働く現場となる。
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「第15話 ホストのレンタルスーツの実態」に続く ぜひご覧ください。
