
ホスト 内部告発 暴かれた現実、、、
内部告発が暴く“現実”とは
「……見ました?朝比奈さん、あれ」
ユウトがスマホを差し出すと、朝比奈は目を細めて画面を見つめた。
そこには、元ホストと名乗る人物のSNS投稿がずらりと並んでいた。
《売掛を押し付けられた》《演技接客で嘘をつかされた》《指名を取るために“つくれ”と言われた》
初めは誰も信じていなかった。
しかし、そのアカウントは日を追うごとに信ぴょう性を増していく。
過去のレシート、内装、特定可能な人物──。
つまり、匿名のはずなのに、“誰か”が確実に知っている情報が流出していたのだ。
そして、その投稿の中に、ユウト自身が映る“後ろ姿”の写真が含まれていた。
朝比奈の沈黙と“告発”の代償
「俺のせいかもしれない」
朝比奈はそう呟いた。
「あいつ、前にウチ辞めたやつだ。売掛が焦げついて、揉めた」
そのとき、店内の空気が一気に変わった。
加えて、SNSの拡散が進むにつれて、従業員の間には不信感が広がっていく。
「これ、本当にあいつだけの仕業か?」
「中から、情報出てるんじゃないか?」
そんな声が飛び交うたびに、ユウトは息が詰まるようだった。
もちろん、事実、何もしていない。
それでも、名前を出され、顔も写り、「あのホストも関与していた」とまで書かれてしまった。
「守るから」と朝比奈は言った。
実際に、その言葉通りに、朝比奈はSNSに匿名で反論投稿を続けた。
しかし──それが新たな火種になることも、彼はすでに知っていた。
内部告発という名の“分裂”
やがて、運営会議が開かれた。
その場には、黒速会幹部の何人かが集まり、さらには情報漏洩の疑いがかかっている人物を名指しする者もいた。
「このままでは、ブランドイメージが崩壊する」
「だからこそ、売掛の扱いを、根本から見直すべきだ」
その結果、議論は紛糾し、誰もが“疑心暗鬼”になっていく。
ユウトは、自分が中心にいるわけでもないのに、なぜか視線がどんどん集まるのを感じた。
そしてついに、その夜──朝比奈は誰にも言わず、ひとり姿を消した。
“沈黙の罪”を誰が背負うのか
後日、元ホストのアカウントから投稿が突然止まった。
とはいえ、ネットに残った記録は、簡単には消えない。
ある投稿には、こうも書かれていた。
《あの人だけは、何も悪くない。かばってくれたこと、忘れません》
ユウトは、すぐにわかった。
この言葉が、朝比奈に向けられたものだということを。
確かに、ホストの内部告発は、一夜で店の空気を変える。
金ではなく、信頼が崩れていくその瞬間を、彼はまさに目の当たりにした。
