
ホスト初日 緊張 その言葉だけでは語り尽くせない夜が、そこにあった。
エレベーターに乗るだけで手が震えるなんて、想像もしていなかった。
国見はその日、「初出勤」という言葉の重みに、真正面から向き合っていた。
店のドアが開いた瞬間、まぶしいライトと、背筋が伸びるような空気に飲まれる。
けれども、それは“幻想”にすぎなかった。
「新人か? スーツに着替えて、ホール出てこい」
冷たくもないが、温かくもない。その言葉に従って、更衣室へと向かう。
まだ何も知らない。ただ、逃げずに座り続けるしかなかった。
ホスト 初日 緊張の中で受けた洗礼と、接客の現実
ロッカールームで支給された黒のスーツに着替える。
鏡に映った自分は、どこか借り物のようだった。
「とりあえず、隣に座ってニコニコしとけ」
それが唯一の“マニュアル”。
いざ接客が始まっても、言葉が出てこない。
「お酒、作りましょうか?」その声は裏返り、女性客に笑われた。
逃げたくなる。でも、逃げなかった。
この世界に“選ばれた”という感覚を、まだ捨てたくなかった。
深夜0時を過ぎた頃、ようやく少しずつ空気に馴染み始めた。
先輩たちの会話を観察し、笑いのタイミングを真似する。
しかし、“売れるホスト”たちの所作は明らかに違っていた。
ホスト 初日 緊張を経て見えた覚悟と気づき
休憩室に戻り、水を飲む手が震えていた。
「誰にも頼れない。だけど、誰にも負けたくない」
そのとき背後でドアが開く。
「初日って、地獄だよな」
同じタイミングで入店した新人だった。少しだけ、肩の力が抜けた。
何者でもない二人。だが、同じ階段を登ろうとしている。
夜が明け、国見は歌舞伎町の街頭に立っていた。
ネオンが消える空の下、“誓い”がよぎる――。
(俺が、“表”に立つ――その一歩目が、今日だった)
裏社会の夜明け──東條もまた、誓いを胸に
その頃、あるビルの地下。東條は組織の仕事を終え、冷えた床に座り込んでいた。
「逃げなかったな、東條」
組の先輩がぼそりとつぶやく。
しかし、東條は答えなかった。ただ、血のにじむ拳を見つめていた。
(俺たちは、あの団地で約束したんだ。絶対、変わってやるって)
ホストとして、裏社会として。
違う道を歩みながらも、二人の“初日”は、同じ夜空の下にあった。
ホスト 初日 緊張の夜を越えて──始まりの夜に
失敗もした。笑われもした。
それでも、逃げなかった。
それが――国見と東條、それぞれの“第一歩”だった。
