
理不尽なホストの先輩との出会い
理不尽なホストの先輩という存在は、どの店にも一人はいるのかもしれない。しかしジンは、体入初日にいきなり先輩から声をかけられた。
「仁君、いらっしゃいませってちょっと言ってみてくれる?」
まずは、言われるがままにジンは小さな声で答えた。
「いらっしゃいませ!」
すると先輩は首を振り、「もっと大きな声で、気合入れて!」と要求してくる。
ジンは戸惑いながら再び声を張る。
「いらっしゃいませ!」
しかし先輩は納得しない。「まだ声が小さいなぁ、こんな風に言うんだ」と見本を示した。
次の瞬間、ホストクラブの空気を切り裂くような大声が響いた。
「しゃっせー!!!」
「しゃっせー」とは何なのか?
ジンは心の中で叫んだ。「えっ!? しゃっせー!? いらっしゃいませじゃないじゃん!」
確かにホストクラブでは「いらっしゃいませ」や「ありがとうございます」の掛け声を、大きな声と気合で表現するのが基本だ。だが、声が荒々しくなるにつれて、言葉はしばしば変形していく。
たとえば「いらっしゃいませ」は「しゃっせー!」になり、「ありがとうございました」は「ありゃりゃしたー!」に変化することがある。まるで居酒屋の威勢の良い掛け声のようで、初めて耳にした人は必ず驚くだろう。
ジンも例外ではなかった。理不尽なホストの先輩に倣って声を張り上げたものの、心の中で「何語なんだよ!」と突っ込まずにはいられない。
理不尽なホストの先輩が求める「気合」
理不尽なホストの先輩たちが口にする「気合」とは、単なる元気さではない。やる気、真剣さ、一生懸命さを声に乗せて表現することを意味する。幹部や代表の方針で「しゃっせー!」や「ありゃりゃしたー!」を徹底させる店も少なくない。
営業前にはスタッフ全員が並び、基本の挨拶練習が行われる。誰もが一斉に声を合わせると、クラブ全体がまるで応援団のように活気づくのだ。その姿にお客はエネルギーを感じ、「この店は勢いがある」と好印象を抱くことも多い。
ただし近年は、体入直後に大声を強制することは少なくなった。接客に慣れていない初心者や、恥ずかしがり屋の新人でも安心して働ける環境が整えられつつある。
店によって違うホストの掛け声文化
理不尽なホストの先輩の指導を受けながら、ジンは思った。
「やっぱり普通に『いらっしゃいませー』『ありがとうございましたー』でいいんじゃないのか…?」
実際、クラブによって掛け声のスタイルは異なる。明るく丁寧に挨拶する店もあれば、気合を前面に押し出す店もある。どちらが正解というわけではなく、重要なのは店の方針に合わせてチーム全体で一体感を持つことだ。
ホストクラブは接客業である以上、声の大きさや雰囲気作りが売上に直結する。だからこそ、理不尽に思える先輩の指導もまた、店の空気を守るための「文化」なのだ。
最後に:理不尽なホストの先輩とどう向き合うか
理不尽なホストの先輩の要求は、時に新人には理解できない。だが、その裏には「お客様に元気を届けたい」という強い意識がある。
ジンにとって「しゃっせー!!!」の衝撃は忘れられない体験となったが、同時にホストクラブという場所の特異な文化を知るきっかけにもなった。
これからホストを目指す人に伝えたいのは、無理に大声を出す必要はないということ。店によってスタイルは違うし、個性を生かした接客も十分評価される。理不尽に見える指導の中にも学びはあり、やがて自分の武器となっていくのだ。
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このお話の原作は
「第31話 理不尽なホストの先輩」 に掲載中です!
