「肩を並べて、生きるって決めた日」第1話

ホスト 未経験 物語 肩を並べて、生きるって決めた日

ホスト 未経 験物語 が、今始まる「なあ、ホストって、俺らでもできんのかな……?」

夜の公園。まだ肌寒い春の風が、昇大の頬をなでる。
彼はベンチに腰をかけ、ペットボトルの水を回し飲みしながら、ぽつりと呟いた。

「誰でも最初は未経験だろ。やるしかねえよ、もう。」

隣に座る龍斗は、星の見えない夜空を見上げながらそう返した。
その声には力がこもっていた。
感情を押し殺しているようで、どこか決意にも似ていた。

「でもよ、怖くねえ? 俺ら、コネもねえし、見た目も“ザ・ホスト”って感じじゃないしさ」

「うん。だけど――それでも、金がいるだろ?」

龍斗がポケットからスマホを取り出し、画面を昇大に見せる。

ホスト 未経験物語 はネット検索からはじまる

「信頼できそうな求人サイトで見つけた。昨日今日できたわけじゃなさそうだから、闇バイトってこともないだろ……まあ、俺たちがそんなこと言ってる場合でもないけどな。ほら、未経験歓迎って書いてある……俺たちみたいな奴向けだな」

そこに映っていたのは、ホストドットコム【R-S(アールズ)】というホストクラブの募集ページ。
《未経験歓迎・日払いあり・寮完備》という文字が、スマホのライトに白く光っていた。

「……“R-S”って店か。聞いたことねぇな まあ何にも知らねえからな 笑」

「知らなくてもいい。知ってもらう側になるから」

その目はまっすぐだった。
昇大が昔、誰よりも信じていた“弟の目”だ。
何度も傷ついて、それでも折れずに残っていた光。


―回想・孤児院時代(屋上)―

「龍斗、こっち!屋上、誰もいねえぞ!」

コンクリの階段を駆け上がり、手を引いて弟を連れ出した。
朝焼けに染まり始めた孤児院の屋上で、昇大は金網越しに見える街を指さす。

「兄ちゃん、俺らって、いつかどこ行けると思う?」

「……空だよ」

「空?」

「泥の中にいるやつほど、でっかく昇るんだ。――“昇る龍”みたいにさ」

龍斗はその言葉に小さく笑って、うなずいた。
それが、“昇竜”という言葉の原点だった。


あの日の朝焼けは、今でも心に焼き付いている。
あの屋上で交わした約束が、いつまでも兄弟の背中を押していた。


―さらに過去、孤児院内の記憶―

「ごめんね、昇くん……今年もプレゼント、用意できなくて」

院の職員の言葉に、昇大は「気にしてません」と無理に笑ってみせた。
でも、本当は悔しかった。誕生日を祝われた記憶なんて、一度もない。
代わりにケーキを分けてくれたのは――弟の龍斗だった。

そしてもう一つ、忘れられない日がある。

「やめろよ! 龍斗に手ぇ出すな!」

不良に絡まれていた龍斗をかばい、昇大はケンカを買った。
結果、昇大は孤児院内で問題児扱いされ、しばらく停学に。

でも、それでいいと思った。弟だけは傷つけさせたくなかったから。


「ヒロは、元気かな……」

夜空を見ながら、龍斗がふとつぶやいた。

「ああ……あいつ、今どこで何してんだろな」

“ヒロ”――同じ孤児院で育ったもう一人の兄弟のような存在。
いつの間にか姿を消したが、今も心の中にはいる。

(いつかまた、どこかで――)

昇大は思った。それもまた、物語の続きになる気がした。


「お前、何か思い出してた?」

龍斗がポケットに手を突っ込みながら言う。

「……あの屋上。思い出してた」

「そっか」

何も聞かない弟の優しさが、逆に胸に刺さった。

でも、だからこそ――昇大は言えた。

「二人で、絶対、上まで行こうぜ」

「ああ、“上”ってのは、てっぺんのことだろ?」

ホスト 未経 験物語 スマホの先

兄弟の視線は、もうスマホの求人先を見ていた。
その先に何があるかなんて、まだ何もわからない。

でも、だからこそ――行く価値がある。

肩を並べて、二人は夜の街へと歩き出した。

次回予告

この作品が漫画化されました!ぜひそちらもお楽しみください!

ホスト漫画ドットコム Rising Dragon-その肩が、道しるべ-

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