ホスト 現場 主義と“甘え”の決別

翌朝、国見は誰よりも早く店にいた。
というのも、眠れなかったのだ。
前夜の会議、田村の言葉、そして――東條の影。
その一つひとつが、ただの出来事ではなく、
まるで“何かを選ばされた”ような、そんな感覚を残していた。
だからこそ、彼はここにいる。
つまり、逃げるでも、抗うでもなく、受け止める側として。
何が正しくて、何が間違っていたのか。
それすら、もう答えは出なかった。
とはいえ、一つだけ確かだったのは、
「自分の番が来た」――そう感じたことだった。
「……でも、甘えてたら意味ねぇだろ」
そう心の中で呟きながら、国見はホールの鏡の前に立った。
そして、少し緩んでいたネクタイを結び直す。
というのも、自分に“ケジメ”をつけるには、まず形からでも整えるしかなかったからだ。
もちろん、まだ迷いはあった。
とはいえ、それを見せていたら何も変わらない。
だからこそ、国見は前を向いた。
「ホストは、現場で証明する仕事だ」
つまり、言い訳も弁明もいらない。
必要なのは――数字と結果、そして立ち姿だけだった。
守られたことに感謝する。
だが、それで売れなきゃ意味がない。
その覚悟が、表情を引き締めていた。
現場主義を支える“視線”その夜、継承初日の店舗に一人の男が姿を見せた。
黒スーツの田村。東條の右腕と噂される、寡黙な男だ。
ホールの奥――客席から見えない位置に立ち、店内の様子を無言で見渡していた。
「……思ったより、荒れてないですね」
誰にともなく呟かれたその一言。
それだけで、スタッフたちの動きがわずかに変わった。
「……あの人の“代理”が見てるらしい」
そんな噂が、バックヤードに流れる。
「静かに見守り、必要ならすべて動かす」
前夜に田村が残したその言葉が、現場に“緊張感”として浸透していく。
現場 主義が交差するホスト
その夜、国見がフロアに立つと、入口に黒スーツの男が現れた。
東條……ではなかった。
だが、その男は国見にだけ目線を向け、静かにうなずいた。
「うちの代表が、“お前は信頼に足る”って言ってたぞ」
その言葉に、国見は深く一礼した。
言葉よりも、行動で返す。
今日この日から、自分が守られる側ではなく、売って証明する側になる。
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