
ホストは売上が正義なのか?――問いの始まり
ホストは売上が正義なのか?ナンバー発表の夜、店内に一瞬だけ沈黙が走った。拍手の音が遅れて起きたのは、また神崎剛志がNo.1を維持したからだ。
誰よりも売り、誰よりも注目される。だからこそ、彼の存在は“憧れ”と“反感”を同時に背負っていた。
ホストは売上が正義なのか?-ナンバー発表の夜に起きた、わずかな沈黙
「ホストは売上が正義なのか?」ふと、朝比奈亮は新人ホストのレオからそう問われた。まだ経験も浅く、売上も未達の彼が、その問いを口にすることに朝比奈は驚かなかった。なぜなら、自分自身もかつてそう感じていたからだ。
理想と現実、そのはざまで
「正義かどうかはわからない。ただ、売上がなければ生き残れないのも事実だ。だが、それがすべてだと思った瞬間、人間じゃなくなる気がする。」
そう答えながらも、朝比奈の胸にはひっかかる感覚があった。けれど、口には出さない。それは、あまりに脆い理想論として受け止められかねなかったからだ。なぜなら、今この店〈黒の城〉を支えているのは、まぎれもなく“数字”だからだった。
売上の裏にある孤独
しかし、それでもなお、彼は信じていた。接客の中で生まれる信頼や空気感、それがなければ、たとえ売上が一時的に伸びたとしても、客は長くは残らない。けれど、それを若いホストたちに理解させるのは難しかった。
一方で、ゴウは数字だけを追っていたわけではなかった。
彼は分かっていた。売上には裏と表があり、同じ金額でも意味は違う。だからこそ、指名客一人ひとりの表情を見逃さなかった。
だが、彼の背中には確かに“影”があった。
それは、常に周囲を警戒し、誰も信じ切れないという孤独の色だった。ナンバー1でいることの重圧は、誰かに共有できるものではない。
だからこそ、すれ違う“信念”
「売れることと、信じられることは、同じじゃない」
その言葉を、かつて朝比奈が口にしていたことを、ふと思い出す。
とはいえ、今さら戻れる場所などない。だからこそ、黙って稼ぎ続ける。それが、神崎剛志という男だった。
ホストは売上が正義なのか――
その問いは、いまや誰もが触れたがらないテーマになっていた。だが、静かに、確実に、それは店の空気に染み込みはじめている。
次話への導線:No.2の“焦り”が牙をむく
客が笑い、シャンパンが開き、金が動く。
それでも、どこかで誰かが問い続けている。
「この道の先に、何があるのか」と。
そして次話では――
朝比奈と同じく、かつて“上”を目指していた男が動き出す。
その名は、東雲ユウト。元No.2の彼が“牙をむく”とき、黒速会の序列は再び大きく揺れ始める。
▶ 第3話『失われた牙、噛みつく夜』へつづく
