
喋れない、話せないホストの苦悩
喋れない、話せないホスト。ジンはまさにその状態だった。
先輩ホストが「仁君はホスト未経験で今日がホスト初体験なんだ」と紹介すると、お客様は「へー、そうなんだ」と優しく微笑む。ジンは「はい…そうです…」と小声で答えるのが精一杯だった。
会話は盛り上がっていくが、ジンはただ聞いているだけ。心臓はバクバクと音を立て、相槌すら打てない自分に焦りを感じていた。
会話に入れない置物ホスト
先輩ホストはお客様に向かって「俺、ホスト始めたころは毎日緊張してたなぁ」と昔を懐かしむ。お客様も「懐かしいねー」と頷く。そのやりとりを見てジンは「すごい…自然に会話が進んでる」と感心するしかなかった。
さらに他のホストたちが「代表でもそんな時期があったんですね」と話題を広げ、「新人の時の椿は可愛かったなぁ」「今も俺は可愛いよ」と冗談交じりに盛り上げる。笑いが飛び交う空間の中で、ジンは「はは」と引きつった笑みを浮かべるしかなかった。
心の中では「全然会話に入れない!相槌すらできない!」と悲鳴を上げていた。
喋れないホストは珍しくない
新人ホストが置物のように黙ってしまうのは珍しいことではない。緊張のせいで話についていけず、どのタイミングで相槌を打てばいいか分からなくなるのだ。ジンもその一人で、ただ座っているだけの時間が続いた。
実際、ホスト業界では喋れないホストを「置物ホスト」と呼ぶ。新人だけでなく、ベテランでも全く喋れないタイプは存在する。とはいえ、それが必ずしも悪いわけではない。お客様によっては、静かな雰囲気を好む人もいるからだ。
ホストクラブの会話は日常的
ホストクラブでの会話と聞くと、特別な話題を想像する人も多い。しかし実際には「暑いね」「化粧が落ちるよね」といった日常的な話題が中心だ。担当の愚痴をサブ担にこぼすようなやり取りもある。つまり、特別なスキルがなくても、自然体の会話で十分成り立つのだ。
喋れない、話せないホストであっても、経験を重ねるうちに少しずつ会話に慣れていく。ジンもまた、この日をきっかけに「置物状態」を脱するための第一歩を踏み出していた。
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このお話の原作は
「第37話 喋れない、話せないホスト」 に掲載中です!
