
ホストの金銭感覚 あとちょっと”に潜む落とし穴
──深夜の歌舞伎町。空気が少し落ち着き始めた頃、ホストの彼がようやく席に戻ってきた。
「ただいま。遅くなってごめんね」
そう言って腰を下ろした彼の表情は、いつになく沈んでいた。
「おかえり~。なんかテンション低くない?どうしたの?」
少し心配になって声をかけると、彼は目を伏せながら答えた。
「今日ね、あとちょっとでラスソン取れそうだったんだけど……無理そうでさ。本当に、あとちょっとだけだったんだ」
その“あとちょっと”という言葉に、私は心の中でざっくりと計算する。
(あとちょっとって……1万とか、2万くらいの話よね?)
彼の顔にはまだ未練が残っていた。数字に追われる世界で生きているのは理解してる。けれど、それでも私は思った。
(だったら、その“あとちょっと”くらい応援してあげてもいいか……)
「あとちょっとなら、勿体ないよ。なにか頼んでいいよ」
そう言った瞬間、彼の顔がぱっと明るくなった。
「え、本当⁉」
嬉しそうに身を乗り出してくる彼。けれど、次の一言で私は現実に引き戻された。
「ねぇ、今日いくら使える?いくら持ってきた?カード持ってる?」
その言葉に、私は思わず眉をひそめた。
(おいおい……さっき“あとちょっと”って言ってたじゃん)
「ちょっとだけって言ったよね?いくら使わせる気だよ……」
そう言いながら笑ったけど、内心では複雑だった。
ホストの金銭感覚は“ズレている”?
ホストクラブでの「金銭感覚」は、日常のそれとはまるで違う。
彼らにとっての“あとちょっと”は、一般的な数千円ではない。“ラスソン”というステージに立つためには、何万円、時に何十万円という上積みが必要になることもある。
だからこそ、彼らの言葉を鵜呑みにしては危険だ。
けれど、彼らも必死だ。数字を追いかけ、日々競争にさらされ、指名が入らなければ居場所もない。そんな世界で生きている以上、多少の“強引さ”も仕事のうちなのかもしれない。
──でも、こっちも財布は一つ。
“あとちょっと”の先に、彼の笑顔があるなら。それでも、今日はこの辺にしておこう。
この話の原作4コマは ホスト漫画ドットコム「第17話 ホストの新人」 に掲載中です!
