ホスト 続ける理由 ─それでもこの世界で【巨塔 第30話】 

ホスト 続ける理由

ホスト 続ける理由 ──残った側の苦悩と決意

「もうレンさん、完全に来てないんですね……」

ナオキのつぶやきに、隣の先輩ホストはただ静かにうなずいた。
すでに、レンが姿を見せなくなってから数日が経っていた。
それでも、店は表面上“何事もなかったように”回っていた。

数字も、売上も、イベントの進行も──
すべては変わらないように見えた。いや、見せかけていた。

──けれど、何かが決定的に欠けていた。

「この仕事、続ける意味あるのかな……」

ナオキのその言葉は、ただの愚痴ではなかった。
胸の奥に残る“違和感”が、確実に彼の中で膨らんでいたのだ。

思わず漏れたナオキのつぶやきに、自分自身が驚いた。
だが、そう感じるのは当然だった。
仲間を“処分する空気”が店を支配し、
本音を隠さなければ生き残れない世界になっていた。

それでも、ナオキは今日もスーツに袖を通した。
なぜなら──そこに、“変わらないもの”もまだ残っていたからだ。


売上ではない、ホストとしての本質

ある晩、ナオキはいつものようにテーブルについた。
その客は常連ではなかったが、ふとこんな言葉を口にした。

「あなた、他の人と違うね。
無理に売ろうとしないのに、ちゃんと話を聞いてくれるのね」

そのひとことが、不意に胸に刺さった。
なぜなら──ナオキがホストになった理由は、
“ただ売れるため”ではなかったからだ。

誰かに認められたかった。
必要とされる人間になりたかった。
だからこそ、この世界に飛び込んだ。

──にもかかわらず、いつの間にか「売上至上主義」に飲まれ、
自分の“原点”を見失いかけていた。

もちろん、数字を追うことはホストにとって必要不可欠だ。
だが、それ“だけ”では──心は少しずつすり減っていく。

売上に振り回され、指名を取ることに追われているうちに、
「なぜこの仕事を選んだのか」すら、見失ってしまうこともある。

そんな中で、ナオキの胸に残り続けていたのは──
レンが最後に遺した“姿勢”だった。

それは、売上や数字といった評価軸とは異なる、
「人としての信頼」や「接客の本質」を大切にする在り方だった。

──レンがくれた言葉も、態度も、もう戻ってはこない。
それでもなお、ナオキの中で、何かが静かに灯っていた。

「俺は、ちゃんとしたホストになりたい」

その願いだけが、今も彼の中で、確かに形を持ちはじめていた。


ホスト 続ける理由、それは“誰か”のため

深夜、営業後の店内でひとり片づけをしていたナオキに、
ある後輩が声をかけた。

「……俺、辞めようと思ってた。でもナオキさんが話しかけてくれて、もう少し頑張ってみようかって」

その瞬間、ナオキは確信した。

ホスト 続ける理由──
それは、“誰か”にとっての支えになれるかもしれないという希望だった。

レンが去った今、この店に必要なのは“正しさ”ではない。
“優しさ”と“覚悟”だ。

「俺がやらなきゃ、何も変わらない。
だったら、ここでやる意味はある」

ナオキは胸を張ってそう思った。
ホストとしての未来は不確かでも、
“今ここにいる理由”は、確かにあった。


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